文化デリックのPOP寄席

第0回 2005年2月 ゲスト: 堀雅人(放送作家/ライター)

書籍:みうらじゅん『正しい保健体育』 (理論社)

「どうしてセックスしてはいけないの?」「女子が体育館で見てる映画は何?」「包茎は手術したほうがいいの?」――青少年期に誰もが抱える悩みの数々に名答を与える名著は、“よりみちパン!セ”というヤングアダルト新書の第1期刊行分の1冊。版元は、なんと児童書で知られる理論社。他のラインアップを挙げると、リリー・フランキー『言葉の教室』、森達也『いのちの食べ方』、伏見憲明『さびしさの授業』、養老猛『馬鹿なおとなにならない脳』。

川勝:

『正しい保健体育』は、『天国の本屋』がベストセラーになった作家の松久淳くんの構成、祖父江慎さんの装丁と、ゴールデン・トライアングル!


下井草:

表紙のデザインが本当の保健体育の教科書みたいな仕上がり。ヤングアダルト新書の読者対象は表向き中学生以上のすべての人向けということになってます。


川勝:

でも、内容的には40歳以上のチ○ポの立ちが悪くなった男じゃないとわからないような話が満載(笑)。一言でいえば「チ○ポとキン○マをベースにした、みうら流の般若心経」といった感じでしょうか。おそらく、みうらさんの好きな仏教的な考えが性に対しても反映しているんでしょうね。おネエちゃんと遊び倒した末に、この境地に至ったと。「女の人を敬わなければならない」とか「セックス飽きても友だちは永遠」とか……。


下井草:

「結婚するとセックスはしません」とか(笑)。


川勝:

そういった含蓄は、20代までのチ○ポびんびん期にはわからないものだから。若い人が背伸びしながら読んでも楽しめる内容になっていますが、ある日半勃ちになった日を境に、よりここに書いてあることがしみてくるでしょう(笑)。そういう意味では賞味期限の長い、教科書にふさわしいエヴァーグリーンな本になっています。


下井草:

読む年齢によって捉え方や身につまされ方が違うでしょうね。僕は「性知識の正しい研究発表」という項目の「カウパーという人とバルトリンという人がそれを発見したために、その後ずっと“カウパー氏線液”と“バルトリン氏線液”と呼ばれることになった。ぼくが何かを発見したら“じゅん液”と呼ばれるんじゃないか」というくだりが、くだらなくて大好きです(笑)。そこにちゃんとウィリアム・カウパーとカスパル・バルトリンの肖像画を載せているところがすごい。


川勝:

カウパー本人の顔なんて、ほとんどの人が初めて見るんじゃないかな(笑)。構成の妙は天才的なものがあるよね。「SMのSはサービス。Mはメモリー」というセオリーは、もともと松久淳くんの呑み屋で開陳する持論だったりするので、リミキサーとしての松久くんの手腕にも注目です。それと面白かったのが、意外ともてることが納得できる人として、林家こぶ平(現・林家正蔵)、安岡力也、DonDokoDon平畠の名前があがっていて(笑)。怒られるかもしれないと思いながら、吉本興業に電話して、平畠さんに掲載許可の連絡をとってみたら、「僕でいいんですか」と大喜びしたというちょっといい話も小耳にはさみました(笑)。


下井草:

アハハハ。相方のぐっさん(山口智充)じゃなくてよかったんですかね(笑)。そもそも、本文にも、平畠という名前はまったく出てなくて、「DonDokoDonの山口氏じゃないほうのような人」って書いてある(笑)。


川勝:

とにかく全ページ、究極のパスティーシュになっていて、笑いながら性への悟りのようなものが身に沁みてくる。この本は、みうらさんの系譜でいうと、「親孝行とはプレイである」とした『新「親孝行」術』の延長線上にあると思います。そういう意味でも、AORならぬAOS(Adult Oriented Sex)な1冊だと言えるでしょう。